「反戦グッズ」ならアリ、について

前の日記、
↓【「回天QP」…やっぱり「ちょっとブラック」じゃ済まない】
http://d.hatena.ne.jp/yotayotaahiru/20091219/1261245599

を書いてから、まだぐずぐずと考えている。





反戦グッズ」としてなら評価できるか?


はてなブックマーク―人間魚雷「回天」キューピーストラップ】
http://b.hatena.ne.jp/entry/www.iwadai.com/SHOP/031sutorappu.html
より、

id:noharraさん
ま結局 大日本帝国のやったのはこういうことだった。そういうことになりますね。 自衛隊公式グッズとは知らなかった。でも反戦グッズとして強く肯定できる!!

id:y_arimさん
goods, military, history, これはすごい なんというか、「崖の上の回天」という感じのデザインだ(意味不明)//一周して反戦グッズとしてはアリか。


それから、tyokorataさんのエントリ、
【キューピーと回天】2009年12月18日
http://d.hatena.ne.jp/tyokorata/20091218/1261099711


などなどを読んで、いろいろ考えました。
私は、これと同じデザインのオブジェや、
あるいはこのストラップそのものを使ったものであっても、
何かしらのメッセージを発する「表現物」「創作物」があったとしたら、
それはそれとして評価するし、作者を尊敬するこあともあるだろうと思います。
(それがニコ動の動画であっても、ガツンとしたエネルギーを感じたら尊敬する)


でも、このストラップ自体は評価しません。
だって、あまりにも何も考えないで作ったようにしか見えないから。


「アート」なら良い、というわけではありません。
あるいは、「反戦」メッセージが入っていれば良い、ということでもありません。
何か「表現したい」意図があって、ブーメラン覚悟で作り、その表現に力があったら、
そのモチーフがどんなに不謹慎であっても差別的であっても、評価できるところはあると思います。でも、そういう「何か」を本体写真やパッケージ、宣伝文からは感じません。


はてなブックマーク」ページに残っている宣伝文を再掲・引用します。
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ちょっとブラックな感じがしますが、いわゆる人間魚雷のストラップです。キューピーの大きさは約3?。 回天は、太平洋戦争末期、戦局を打開するためにとり入れられた日本海軍の特攻兵器の一つで、人間が魚雷の中に入って操縦しながら敵艦に体当たりしていく兵器です。回天は「天を回らし戦局を逆転させる」の意。回天乗組員を描いた横山秀夫の秀作『出口のない海』は、2006年市川海老蔵主演で映画化されました。

※ブックマークのリンク先は、
自衛隊グッズの販売 基地内ショップ(PX)ロックランド」
http://www.iwadai.com/SHOP/516333/list.html
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「何も考えていない」はちょっと違うな・・・
「安易な考え」が透けて見える気がする、というところかもしれない。
 もちろん、もともとのこの商品の企画者やデザイナーが実際のところ何を考えていたのかは、私にはわかりません。実際には、何か深い意図や、何かしらの愛着があったのかもしれません・・・極端な話、実はデザイナーは完全に「反戦」の意図がある人(いわゆる「サヨク工作員)だったとか、戦死者の遺族が愛情を込めて作っていたキューピーがもともとのアイディアだったという可能性だって否定できません(←これらの例はすべて完全に私の妄想です。言明しておきます!)
 でも、防衛省の施設やら自衛隊基地の売店で販売する商品として見るならば、
 ↑ http://ichita.blog.so-net.ne.jp/2009-12-16
 それは単なる「ご当地キューピー」になってしまいます。
 ちょっと目先が変わった「ご当地キューピー」。
 

 ひっかかるのは、「ちょっとブラック」という言葉。

 かわいいでしょ、親しみが持てるでしょ。でも、「ちょっとブラック」ですよ、映画にもなった特攻兵器だからね、でも、かわいいでしょ。かわいがってね。映画知ってる?市川海老蔵主演のドラマなんですよ・・・と、なんか媚びたような宣伝文に読めます。
 あ、もちろん、そう読んでしまうのは、読み手である私のバイです。*1


 でも、「ちょっとブラックだけどカワイイ」商品として、まともに受け取ってしまったらしいのが、小池百合子自民党広報本部長…元防衛大臣
 山本一太参議院議員に、愛用の「ほふく前進をしている自衛隊員キューピーストラップ」をかわいいでしょ、と見せたあと、「あのね、他にも、零戦のキューピーちゃんとか、回天のキューピーちゃんもあるのよ!」と続け、山本一太議員は自身のブログで<「零戦」はまだしも、「回天」に乗るキューピーちゃんストラップはマズいと思う、な。(苦笑)>とつづっています。小池百合子防衛大臣が「回天QPストラップ」を持っているのか、それとも「売店」にあることを話していただけなのかはわからないけど、小池百合子防衛大臣は、当該キューピーを「ちょっと変わったカワイイキューピーちゃん」として紹介していた(はしゃいでいた)と山本一太議員は見ていたわけですよね。

↓【山本一太 気分はいつも直滑降「回天のキューピーちゃんは問題」】
http://www.iwadai.com/SHOP/516333/list.html


  
 「回天」などの特攻兵器は、「ちょっとブラック」じゃすまない重い歴史的存在です。
それをライトに「ちょっとブラック」と表現して、「かわいい」アレンジをほどこす。
もしかしたら、「それをきっかけに映画も観て欲しい、もっと歴史を知ってほしい」意図はあったかもしれない(プロパガンダ的に・・)けど・・・大抵は「ちょっとブラックでめずらしいストラップ」で終わってしまうのじゃないかしら。無邪気に語った小池百合子防衛大臣みたいに(←この人の場合は「立場的にどうなの?」という問題もついてくるけど)。
 


tyokorataさんのエントリ、
【キューピーと回天】2009年12月18日
http://d.hatena.ne.jp/tyokorata/20091218/1261099711
より、以下、一部引用
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(前略)
 今回の回天のコラボグッズに対する拒否反応は私は理解できますが、そこで「当事者や関係者に対して申し訳が立たない」というのは、一見筋が通っているように見えます。

 しかし、「自分はどう思うのか」ということに思いをめぐらせた場合、そこで「穢れた出来事だから」という理由で嫌悪感を示しているのなら問題です。

 何故ならそこで嫌悪感が邪魔をして思考が停止してその事象について考えない危険性があるからです。他人がどうこうはともかく、自分がどう思い、どう考えるかが大事だと私は考えます。

 なぜ、こんなにも狂った兵器を作り出してしまったのか、何故国民はそうした兵器で死んでいく人々を賞賛していったのか。

 そこに目を向けない限り、永遠に堂々巡りだと、私は考えますし、何よりも思考停止して同じ事を繰り返していく事こそが、亡くなっていった人々に対して一番失礼な事だと思います。

 最近だと自己責任という言葉を以って弱者を放置して死ぬがままに任せる風潮や、過去に於いては「24時間戦えますか」という大戦中のスローガンと同じ文句が流行った事があったり(今でも過労死という言葉はあります)と、思考停止して流されていくケースが余りに多いです。

 日本が第二次大戦に突っ込んでいって、そして自爆兵器という極限の狂気に身を浸して言った原因は何か、そこを穿り返す意味で、今回の回天とキューピーのコラボを私は評価します。

 「不謹慎だ、けしからん」というのは一見道理が通っているように見えますが、「何故けしからん」という事に思いを馳せねば同じことの繰り返しだと私は考えます。
(後略)

※文中の注釈は省略させていただきました。
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 tyokorataさんの主旨は理解します。
 でも、「そして自爆兵器という極限の狂気に身を浸して言った原因は何か、そこを穿り返す意味で」という文脈は、tyokorataさんやid:sionsuzukazeさんのエントリのようなものがでてこないと成り立たないでしょう。
 そして、あまりにも安易に作られている(ように見える)ため、「考える」前に、「かわいい」「おもしろい」か、「不謹慎」「不愉快」で終わってしまいそうです。元の掲載サイトはすぐにひっこめてしまったしね。


 まぁ、もっと考えていけば、小池百合子氏の発言や、すぐにサイトから引っ込めてしまったショップの対応(この対応が企画の安易さを表していると思う)や、話題になった後にサイトで買えなくなってしまった状況でプレミアがつく可能性が高いとか、周辺の出来事を全部ひっくるめて、今の日本の状況を議論していくことはできるし、それはとても有益だとは思いますけれども。

*1:ブクマでid:BYNTENさんからご指摘をうけたので、「バイヤス」から「バイアス」に訂正しました。BUNTENさんありがとね♪