8月6日警察庁発表「少年非行等の概要(平成21年上半期)」 

8月6日の、マスコミ各社が報道した、「児童ポルノ事件の急増」の情報ソースと思われる警察庁発表の資料です。

警察庁のHPのトップにリンクがあります。
http://www.npa.go.jp/
ここに8月6日発表の「少年非行等の概要(平成21年上半期)」がPDFファイルで掲載されています。

ttp://www.npa.go.jp/safetylife/syonen38/syonenhikou_h21a.pdf
(PDFファイルなのでリンクはしません)

 マスコミ各社のニュースが8月6日だったので、タイミング的にも内容的にもこれが一次資料だと考えていいと思います。
 この報告所の12ページから、<第1 4 少年の犯罪被害>という項目があり、(6)が<児童買春・児童ポルノ禁止法違反事件>です。以下、上記PDFファイルの本文から引用します。
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(前略)
(6) 児童買春・児童ポルノ禁止法違反事件
 上半期の統計を取り始めた平成12年以降の上半期の児童買春・児童ポルノ禁止法違反事件による送致件数、送致人員の推移は、表5のとおりである。平成21年上半期の送致件数は939件(前年同期比14.7%増)、送致人員は753人(同21.8%増)であった。
 このうち、児童買春事件の送致件数は557件(同7.3%増)、送致医人員は465人(同7.9%増)、被害児童数は435人(同1.9%増)と増加した。
 児童ポルノ事件の送致件数は382件(同27.3%増)、送致人員は289人(同53%増)、被害児童数は(同51.4%増)と増加し、過去最高となった。
表5

(後略)
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 この文中の表5を参考に、下のグラフを作成しました。

 棒グラフが違反事件の件数で、折れ線グラフが送致人員の人数です。
児童買春事件の方は、件数・人数ともにグラフが山型を描いていて、2006年以降は件数・人数ともに減少傾向があったものが、今年になって若干増加しています。一方、児童ポルノ事件の方は、件数・人数とも、2004年に一度減少した後、ずっと増加を続けています。そして、今年と昨年を比較すると確かに「送致件数」「送致人数」ともに急増しているということができます。特に人数の増加が激しいと言えるでしょう。

 これ、あくまでも「送致件数」および「送致人員数」なんですよね。
 つまり、警察の実績の統計なので、実際の犯罪の数そのものととらえることはできません。もちろん、犯罪が多ければ摘発、送致の数も増えるのですが、法律や条例、そしてその施行規則、裁判の判例をにらんだ送致の判断などが「送致件数」には反映されています。

 2003年には、6月にいわゆる「出会い系サイト規制法」が成立し、同年9月に施行、12月に警察庁が出会い系サイト事業者向けにガイドラインを提示しています。この統計は各年の「上半期」の数を扱っていますから、法律の影響は、2004年の分からということになります。「児童買春」の送致件数・送致人員数ともに2004年は前年と比べて増えていることがわかります。
 そして、2004年には「児童買春・児童ポルノ禁止法」が改正され、同年7月に施行されています。この改正がこの統計に反映されるのは2005年の分からです。
 そして、2008年には、「出会い系サイト規制法」の改正があり、その効果が反映されているのは2009年から。

 犯罪検挙のもとになる法律が改正され、あるいは施行規則が変わると当然検挙数・送致数は変わります。犯罪そのものが増えているとは限らないんですよね。いや、当然、発覚する犯罪行為(私は児童の性的搾取・性的虐待の場面を撮影し、その画像や動画を販売することや無償であってもネット上にあげることは犯罪だと考えます…)は、「氷山の一角」であろうことは想像がつきます。ただ、ここ数年でそういう犯罪が急増しているというよりは、これまでもあったものが発覚しやすくなった、検挙できるようになったと考える必要があると思うのです。